だから私は魔法の絨毯に乗りたいだけ

きまぐれメモリアル/日常エッセイ/それでも私は元気です

22歳の思春期

思えばわたしの人生は、恋というものの気づきが遅かった方であると思う。

良くも悪くも子供っぽく、また恋愛に対して少し潔癖症で、どこか許されないというか、ふしだらというか、高校生までそんなことを考えてきた記憶がある。

よく考えれば姉とも両親とも恋愛沙汰の話はしなかったし、恋愛結婚した姉がいる今もそのような話をするのは少し照れくさい

 

また全くモテるタイプではないわたしになし崩しに彼氏がはじめてできたのも大学2回生に入ってであったが、その時付き合いに発展したのも特段この人がいないと生きていけない、など歌う世間の気持ちも分からぬまま、人生は何事も経験だと思ったからであった(よくよく考えると非道であって、自意識過剰のようだが相手にも申し訳ない気持ちでいっぱいである)。

その彼氏とも2年付き合ったものの、たまのシチュエーションに自分が少女漫画の中にいるみたいだなあと思ってときめくことはあったけれど、それはいま考えると相手に対してではない。

相手に対しては結局友に感じるよりちょっと強めの情がわいたまでで、毎日特別ワクワクするだとかは特になかった。

なんだか綺麗に可愛くなったね、やっぱり彼氏ができて恋をしてるからかなあと友人から言われたこともあったが、側から見たら恋をしているように見えるのかという違和感と、友人へのかすかな失望を感じたまでだった。

 

そんなわたしが、あろうことか世間に言われる恋に、今更、落ちてしまったのである。

 

相手は友達の友達のN君である。

Nくんの良さを端的にいうと、とっても優しいことだ。誰に対しても、自分のできることを100パーセントしてあげたいと思い、実際行動に移せる人間である。

人に優しくありたいと思っているが、なかなかできない心の狭い臆病なわたしにとって憧れとも言える人。

またとってもポジティブで、明るくって、人の悪口も言わない。なんだか少女漫画から直接出てきたような人である。

 

わたしはNくんのことを考えると、なんだか心臓のあたりのなんだかやりきれない痛さを感じる。

自分の失態を夜中に思い出した胸の疼きとも似ている気がする。

隙があれば彼のことを思い出すし、なんだか歌い出したくなるような衝動にもかられる。

なんだか気持ち悪いけれど、止められないのだ。

ああ、恋ってこういうことなのか と、思春期真っ只中のようなことをつい口に出してしまう。ああ、わたし今年で23歳なのに。

 

もちろん、人は完璧ではない。前の彼氏はまあそれなりに賢くはあるのだが、頭の回転が少し悪いというか、要領が良くなく、なんだか割の悪いことばかりやらされる役回りであって、それは確実に自分の利益を確保できないという自分に帰責性のあることであるのにそれをだらだらと愚痴ることが嫌いであった(わたしはそれを頭が悪い男は嫌だなあと考えていたし、大人な男性が好みだなと何度も感じた)。

しかしNくんは要領は素晴らしくいいものの、要領以外はあまりない。

地頭はよいのかもしれないが、語彙力が本当に無く、わたしのこのような拙い言葉でさえ理解できない。

ためらうとか、憚られるとか、そういった言葉すら通じた試しがない。

なんだか本当にアホの子に見える。停電が起きたら喜ぶし、柚子湯の柚子は食べちゃうし、なんだか小学生みたいである。

わたしの理想である賢く、大人な男性とは程遠い。

だけど何故かわたしは大好きなのだ。また、わたしの好きな俳優さんは鈴木亮平すなわちムキムキで男らしいちょっとタレ目な男性が好きなのだがNくんはもはやわたし以上にガリガリなのではと思うほどである

足は折れそうだし、筋肉もひとかけらもないように見える。

しかも目はツリ目で、まあ美形だと胸を張っては言えないような、人並みのごく普通の顔である。

背も平均身長よりも低いし、足のサイズもわたしよりも小さい。

けれど、それでもわたしはNんが大好きなのだ。

こんなに納得できないことがたくさんあるのに、それでも何故かわたしは彼が好きなのである。

これは自分自身未だに不思議に思っている。

 

どうしてこの気持ちが止められないのか?

 

家族法を専攻し、不貞行為の罪の重さをよくよく知っている。

ずっとリスクと信頼の失墜、また相手の心の傷と引き換えに不貞行為をはたらく者の気持ちがよくわからなかったが、今なら不倫する人が世界にいるのは仕方ないなあとも思う。

育ってきた環境が、甘くて我慢ができない、また相手の気持ちを慮る先見がひとかけらでもできなければ、だれでも不貞行為をはたらく可能性はあるだろうなあとすら思う。

 

他の友人たちは、こんな思いを中学生ぐらいからやってきたのだろう。本当にしんじられないというか、長い間よく頑張ったなあと感じる。

 

胸の痛みにつながる思考回路はよくわからないし、なんだか自分自身の気持ちも分析しかねるが、ただ恋は理屈じゃないと歌った先人の気持ちが分かるようになった

なんだか不思議だけど、その通りなのだということがよくわかった。

 

このような気持ちを理解させてくれたNくんには、感謝してもしきれない。

毎日私からのハートマークばかりのラインを眺める彼も、きっと心労に思っていることだろう。

けれどもそれでも優しく毎日私の口角が緩むような返事をくれる彼には、本当にありがたい気持ちでいっぱいだ。

これからも、あともう少しだけでもいいから、わたしの気持ちに付き合ってほしいなあと考えている。

 

最後に、わたしの大学時代を彩ってくれた彼氏に対して、様々失礼なことを言ったが、何も経験値を持たないわたしに貴重な体験と経験をさせてくれた彼氏に対して、非常に感謝している。

彼のおかげで友達とできる会話の幅も広がったし、時に叱ってくれることで自分自身の課題も見えたこと、また優しくされる嬉しさなど、その他様々わたしに与えてくれた。

ただひたすら感謝である。彼に幸あれ。